Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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地域貢献・地域連携

小粒でもキラリと光る大学 新しい大学のモデルを目指して (静岡産業大学 学長 大坪 檀)

構造改革によって地方分権の流れが加速している。
これまでのように中央に縛られることなく、地方が独自性を発揮できる時代が訪れるわけだが、それは同時に地方間の競争が激化し、これまで以上に格差が生まれることも意味している。「地方の時代」を大学はいかに生きていくべきか。
そんな新しい時代のモデルとなるべく、まったく新しい地方大学の姿を提示する静岡産業大学を取材した。

徹底した地域志向で、人材流出にストップをかける

静岡産業大学は、県西部、磐田市と藤枝市に二つのキャンパスを構えている。
学生数2400人という小さな大学だ。いまこの大学に、大学関係者のみならず、産業界や地方自治体からの問い合わせ、視察が相次いでいるという。

それは、徹底して地域に密着しながら、高度な実務型職業人や社会的リーダーを育成するというビジョンに、地元の企業や自治体から多大な期待と協力が寄せられているからに他ならない。

学生は、ほとんど地元出身者だけで定員をオーバーし、その多くは地元に就職する。人材が東京をはじめとした都市部に集中する現在にあって、多くの地方大学が苦戦を強いられているが、なぜ静岡産業大学は、その流れを変えることができたのだろうか。

静岡産業大学の大坪檀学長は、大学の学長としては異色の経歴の持ち主だ。アメリカの大学院でMBAを取得後、ブリヂストンに入社。米国ブリヂストンで経営責任者を務める一方、日本の大学で教鞭も執った。経営学やマーケティングに関する著書も多数ある。

企業の経営感覚を備え、かつ日米の大学事情にも通じた数少ないタイプといえるだろう。それが、この大学の経営を大きく特徴づけている。

地元企業が講師を派遣し、最先端の情報を提供

この大学のセールスポイントの一つに「冠講座」と呼ばれる産官学連携の寄付講座がある。従来、寄付講座といえば、金銭を支援するが講座の内容は大学に任せるのが一般的だったが、静岡産業大学の場合は、企業・自治体から、経営者や社員あるいは首長や職員を講師として招くという新しいスタイルである。

講師を派遣しているのは、電通東日本、静岡銀行、ヤマハ発動機、浜松ホトニクス、磐田市、藤枝市など、静岡を中心とする有力な企業・自治体が名を連ねている。学生にとっては、実社会に身を置く講師から、最先端の知識と情報を、現場の裏話や苦労話も交えつつ直接得ることができる貴重な機会になっている。

しかも、必要な諸経費は、すべて講義を担当する企業・自治体が負担する。なぜこのような画期的な講座が実現したのだろうか。
「それは、日本の教育に対する危機感を企業が共有してくれたからです。私は、アメリカにいる頃から、日本企業は組織としては非常に優れた力を発揮するものの、有能な経営者やビジネスマンでも、個人としての表現力・創造力が乏しく、この点がいずれ日本のネックになるだろうという危機感を持っていました。

このままでは、日本に新しいリーダーは生まれてこない。産官学と地域が一体となって、社会に本当に必要とされる人材を育てていかなければならない。そういう思いをもって、本学の理念とミッションを地域の経営トップにお話ししました。すると多くの企業が共鳴し、意気に感じて協力してくれたのです」と大坪学長は言う。

学内に浸透する「学長方針」

実業界からこれだけの支持が得られたのは、静岡産業大学が、あらゆる意味で「経営の原則」を貫いているからといえる。
まず、意思決定のプロセスが明確である。日本の大学改革が思うように進まない背景には、合議のうえでないと物事が決められないシステムの問題がある。

静岡産業大学では、組織のトップが意思決定権を持つ。組織、人事、予算の大綱は、理事長、本部長、学長の三者によるトロイカ体制で決定される。また、学部の最終意思決定権者は学部長であり、教授会ではない。

学長は毎年「学長方針」を全教職員に配付し、本年度に達成すべき具体的目標を明示する。たとえば、「学生確保対策」では、「2004年度、2005年度は300人、2006年度は330人を確保する体制づくり」を、「女子学生増加対策」では、「全学生数の35%を目標とする増加策」を求めている。

そのほか、「学部の特色づくり」「国際交流活動の促進」「大学院構想」「就職促進プログラム」など、一九項目にわたって方針を打ち出している(2003年度)。各学部では、この方針に基づき、学部長が「学部長方針」を作成する。そして各教員は、今年度に行う教育と研究の実践目標を書いて提出する。こうして学長方針が、現場まで落とし込まれて、各自が具体的に動けるようなシステムができ上がっているのである。

学生と地域のニーズに応え続ける大学

また、徹底した顧客志向も「経営の原則」を踏まえたものである。大学にとっての「顧客」とは学生に他ならない。静岡産業大学では、学生の満足を最大の指標としている。毎年、学生自身の手で「学生満足度調査」が実施される。

そこから見えてきた課題の中で、最も重視しているのが「講義の質」である。「これまで教え方について何も配慮してこなかったことが、日本の大学のレベルを低下させた」(大坪学長)という反省から、ティーチングメソッドの開発に力が注がれている。これは、学内の教授陣が集まり、それぞれの教授法を発表し、改善策を検討するものである。

同様に大切にしているのが、地域のニーズである。静岡ならではのお茶の研究、地域ビジネス研究センターの設置、冠講座の無料公開、高校と提携し高校生の単位認定も行うなど、その斬新さと柔軟性には目を見張るものがある。
「経営学で教えている理論を、実際に行っているだけ。

経営に関しては、企業と比べればそれほど難しいものではない」と大坪学長は言い切る。MBAを持つまったく新しいタイプの学長が目指す新しい大学のモデル。それは、日本の高等教育のあり方に、間違いなく一石を投ずるものである。

横並び意識を捨て、たとえ小規模でも他にはない個性を打ち出すことができれば、大学の可能性はまだまだあるということを示している。
大学トップが独自性と具体性のあるミッションを示し、リーダーシップを発揮して日本に「新しい大学」が次々と生まれることを期待したい。

大学改革提言誌「Nasic Release」第9号
記事の内容は第9号(2003年11月30日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第9号・記事一覧

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