Nasic Release ナジックリリース | 教育界における注目テーマごとに、各界の有識者の方々のご意見・ご提言を掲載した提言誌

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ナジックリリース第25号<BR>(2014年9月1日発行)

特集:「キャンパス進化論」

 

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大学のシーズに市場価値を (関西TLO株式会社)

関西TLO株式会社

1998年、「大学等技術移転促進法」施行。2004年、「特定分野重点技術移転(スーパーTLO)事業」始動。そして2005年9月現在、促進法に定められた要件を備えた承認TLO(Technology Licensing Organization)の数は41に達した。

ここ10年足らずの間に、技術移転に関する施策が相次ぎ実施された背景には、わが国の大学等が保有する膨大な研究リソースが、技術開発に有効活用されてこなかった反省がある。大学のシーズと企業のニーズを的確に結びつけるためのシステムとは――。 

本誌では、今後、知財立国という国策の一端を担ってゆくであろう技術移転機関(TLO)の中から、特に地域TLOに注目。1998年に全国初の地域TLOとして設立された関西TLO株式会社・技術移転事業部長の鈴木氏に、技術移転事業の現状および課題について伺った。

得意分野を活かしたダイレクトマーケティング

――技術移転スキームと特色をお聞かせください。

鈴木氏(以下敬称略) 関西TLOでは、技術移転業務を円滑に行うために会員制の「関西TLO技術情報クラブ」を設け、大学単位で数えると50数大学、200社余りの企業に参加いただいています。

大学は原則として研究者単位での登録となり、その8割方を関西の大学の先生が占めます。企業も約7割が在関西、あるいは関西の窓口でコンタクトを取られる企業です。

研究者会員には、研究活動の支援から成果の権利化・活用まで一連のサポートを行い、さらに大学発ベンチャーの起業・育成支援等も受け付けます。企業会員へは研究情報等の提供と斡旋のほか、特許情報の3カ月間の優先開示や講演会を通して、常に最新の技術情報を提供しています。

――ライセンスアソシエイトは?

鈴木) 専属で6名、非常勤で20名。それぞれの専門分野を活かしながら、状況に応じて一人あるいは複数人で案件に応じます。
なお、研究成果が活用された場合のロイヤリティー収入は、必要経費を控除した後、発明者(研究者)、大学、弊社で3分の1ずつ配分する形をとっています。ただし、大学からの受託案件の場合は、大学との契約及び学内規程によります。

――研究分野によって登録件数の多寡はありますか?

鈴木) 我々の場合、いわゆるナノテクやライフサイエンス関連の案件が半数近くを占めます。京都リサーチパーク誧と共同で支援しているベンチャー企業も、医療バイオ系の企業の起業実績もあります。このあたりは我々の得意分野と言ってもよいでしょう。

――いわば、散在するシーズをニーズといかに的確にマッチングさせるかがTLOの成否のポイントだと思うのですが、関西TLOのマーケティング戦略は?

鈴木) ホームページ等を通じて特許情報をリストアップする方法は、最新の情報を広く発信できる利点はある一方、我々は反応を「待つ」しかない。弊社では、アソシエイトがシーズの持つ性格に応じて対象企業を絞って直接アプローチする手法を主軸とし、ライセンスの成約率を高めています。

今後はさらに、企業の担当者の食指が伸びやすい形態――サンプルや試作品など――を用いて研究の将来性をわかりやすく訴える、また、早い段階から特許流通アドバイザー等の専門家を通じて周辺特許の整備を行うなど、より効果的なマーケティングの方策を追究してゆきます。

知財本部とTLOの連携

――大学単体のTLO、そして知的財産本部が増加傾向にありますが、例えば国立大学の独法化は関西TLOの事業に何らかの影響がありますか?

鈴木) 良い悪い、どちらの面もあると思います。従来は、研究者の特許出願経費を弊社が負担していましたが、独法化後、主要な大学は自学でまかなうようになりました。

――つまり、出願案件のデフォルトに対するリスクが減る。

鈴木) その通りです。一方で、マーケティング活動に制約ができたことがデメリットでしょうか。これまでは、特許出願に至るまでに直接、研究者へのヒヤリングを行い、発明発掘や技術評価の現場に立ち会ってきました。

したがって、個々の技術の核心を、我々自身が正確に掴むことができていましたが、出願までの業務を自学の知財本部が行う大学が増え、情報不足のまま案件をお預かりするかどうか判断せざるを得ないケースが増えてしまったわけです。

――業務の分担や引継ぎについて歯がゆい部分も生じてきていると――。

鈴木) 企業が情報として最もほしいのはその技術の核心部分(優位性、市場性)であり、これをうまくアピールできないかぎり、成約へ導くことは困難です。

今後、弊社としては、各大学の知財本部と信頼関係を築きつつ、ともに新たなスキームを構築してゆきたい考えです。
大学の知財本部が特許出願するまでの段階で、TLOが市場性評価の側面からうまくコミットすることができれば、マーケティングとライセンス活用は企業との強いコネクションを持つTLOが行うといった、効率的な役割分担も可能でしょう。

技術移転市場の成熟のために

――将来、大学が知財をさらに活用し、儲けるためには何が必要だと?

鈴木) 大学にもよりますが、技術移転でロイヤリティーを得るよりも、企業との共同研究で資金を得るほうが手っ取り早いという考え方が未だ根強い印象は拭いきれません。ただ、今後は思い切って意識を変える必要があります。

最も大事なのは、各大学が知財活用について明確な戦略を持つことです。リターンを確実に目論むことができる研究を厳選して権利化し、資金を投下する「選択と集中」とでもいうべき方針を打ち出す、高い先見性を持った大学もすでに出てきています。

そうした意味では、開発中の技術・研究の市場価値を正確に予測し企業に売り込むためのブレーンとして、我々のようなTLOが参画し、ともに戦略を立ててゆく図式も考えられます。

――技術移転先進国といわれるアメリカですら、TLOが産業として成熟するまでに約20年を費やしています。わが国においてTLO事業の五年後をどのようにイメージされますか?

鈴木) アメリカでも20年かかってTLOの成功事例は約半分です。日本は今のところ10年ですから、まさに蕫道半ば福。わが国で技術移転事業が市場として成長してゆくためには、まだ多くの課題が残されています。

我々としては、5年後に向けて、まず大学の知財本部とTLOとの役割分担を明確にし、お預かりする多様なシーズ、ニーズをスムーズに循環させる体制を整えることが緊要であると捉えています。

また、TLOの存在意義――これを技術移転の存在意義と言い換えることもできましょう――が社会的に浸透するには、より多くの技術移転実績が必要です。

そこで、国の支援体制を今以上に整えていただきたい。そもそも技術移転の本質は、大学の生み出す知的資源を市場に還元すること。技術移転が活発化し産学連携の振興が図られることで、日本から有能な研究者や技術者の流出をくい止めることができます。 

TLO事業はそれ自体がリスクの高いベンチャーと言っても過言ではありません。
わが国が今後も知財立国を標榜してゆくのならば、技術移転市場が安定するための環境整備、および意識改革について、資金・施策両面からのさらなるバックアップを望んでいます。

大学改革提言誌「Nasic Release」第13号
記事の内容は第13号(2006年1月1日発行)を抜粋したものです。

 

ナジックリリース第13号・記事一覧

学生、若者、日本人にロマンを! (首都大学東京学長 西澤 潤一)


クライシス・マネジメントと大学経営改革 (同志社大学長 八田 英二)


マネジメント力の徹底強化で自立を期す (京都大学副学長・理事 本間 政雄)


拝啓大学殿 ~国際基督教大学編~ (国際基督教大学 教授 学務副学長)


知の源泉たる大学の使命と改革 (文部科学省 技術移転推進室長 伊藤学司)


大学の知が経済を活性化させる! (経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進課長 中西 宏典)


大学と企業の「知的資産」に「価値」を創造する (一般財団法人知的資産活用センター理事長 増永保夫)


大学のシーズに市場価値を (関西TLO株式会社)


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